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COVID-19における全国各地でのプライマリ・ケア診療モデルの紹介 case02-2 東京医科大学病院の取り組み 総合診療科を中心とした外来・二次救急でのCOVID-19対応の現状 東京医科大学病院 総合診療科 宮島豪 (2020-08-18)

診療システムの構築に至った流れ

新型コロナウィルス感染症(以下COVID-19)は、3月後半から当院外来にも受診するようになった。4月以降のCOVID-19患者数の増加に伴い、紹介状のない外来患者の受け入れを停止した(令和2年4月10日~)。救急応需は救命救急センター(ER)とプライマリ・ケア(PC)エリアで分担し、PCエリアでは総合診療科が一次二次救急とwalk-in患者を担当した。さらなるCOVID-19患者数の増加が懸念されたため、COVID-19対応モデルを構築することとなった。

システムの実際の枠組み

慢性疾患の患者に対しては電話を用いた再診や処方も開始した。

外来患者に対しては、COVID-19疑い症例とそれ以外の症例が同一の診察室を使用しないよう診療スペースを明確に区分けした。不潔区域(赤)、準清潔区域(黄)、清潔区域(青)を明示し、境界には消毒液と個人防護具を常設した(図1、図2)。

次いで来院経路から患者導線を定めた。COVID-19確定症例は陰圧室(1)へ、酸素需要がある症例や二次救急で来院した症例は隔離ベッド(2)へ移動させた。紹介状を持参した患者は受付で体温測定と問診表記載を行い、看護師のトリアージを経る。医師と相談の上、COVID-19の疑いがある患者は発熱者用ブース(3)へ誘導した。この際問診票の記載に関しては、二次感染の危険を考慮して紙媒体への記載は行わないようにした。

採血やPCR検体採取は個室内で医師が施行し、CT検査はERと情報共有してPCエリアに隣接する専用検査室で撮影した。医療事務、看護師、診療放射線技師、医師の役割を明確化し、院内処方や後日会計を用いて患者滞在時間の短縮に努めている。

患者の急激な増加(オーバーシュート)に備えて、東日本大震災時の災害対策を参照し野外テントでの発熱外来設置基準を定めたが、令和2年8月現在設置に至っていない。

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図1.東京医科大学病院PCエリアにおける患者導線
イメージ救急車で来院した症例、確定症例
イメージCOVID-19疑いのあるwalk-in患者

  • 青: 清潔区域(ナースステーション)
    黄: 準清潔区域(廊下)

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  • 赤: 不潔区域(疑い患者を収容)
    写真は救急車搬送前

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  • 赤: 不潔区域(疑い患者を収容)
    写真は救急車搬送後

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図2. ゾーニング
不潔区域は赤線、準清潔区域は黄線、清潔区域は青線で示した。

うまくいっている点

外来から医療従事者や入院患者への院内感染はこれまで確認されていない。また、外来のシステム化によって、患者数増減に応じて安全かつ柔軟な対応が可能となった。

改善を必要とする点

病床の逼迫から初療後に入院先が決まらず、外来ベッドが埋まったまま長時間経過してしまい、続いた救急車を断らざるを得ない場面があった。転院先をスムーズに選定できる広域でのシステムが必要とされている。

〈調査・掲載〉

「covid-19パンデミックに対応したプライマリ・ケア診療システムの集積」対策チーム

日本プライマリ・ケア連合学会
感染症委員会
感染症診療・対策チーム

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